こんにちはいっかいです。
絵画芸術を楽しみましょう。
絵の良し悪しを見極められるようになるために
今回はマティスを紹介します。
マティスはピカソと同年代に活躍した画家です。
マティスの初期の頃は光の科学が理解されたような時代ですので印象派的な絵が流行ってました。なので、マティスも初期の頃はそういった絵を描いてました。
そのころの絵については特に語ることもないので割愛します。
ダンス
『ダンス』1906年以降のマティスの作品にマティスらしさがじわりじわりと出てきます。
この絵はとても上手いです。
この絵の良いところを説明します。
・色数が少なく、シンプルで陰影がないので面が浮き立ちます。
・人の形に着目して下さい。面として捉えたときにシルエットがとても良いのです。
もし影絵にしたとしても、人の形がはっきり分ります。
・5人描かれてますがみんな違う形をしています。特にシルエットを見て下さい。これはリズムが単調にならないようにするために変化を付けているからです。芸術家は変化を付けることにより、自分の芸術性の高さを示します。特にシルエットの変化は重要です。その絵の良し悪しに関わるからです。シルエットを見ただけでその画家の絵の理解度が分ります。
・画家はある程度のレベルに達すると上手く描こうという気持ちが見え見えの絵を嫌います。
それはもっと上手く写真のように描ける人がいくらでもいるからです。上手く描けることが当たり前なんです。しかしこの絵はその上を行きます。上手く描こうというやらしい気持ちが見えません。見えないようにしているのです。
・線が素晴らしいです。日本の浮世絵版画を思わせるような線使いで、ダンスをする人々の肉付きを上手く捉えています。また線の太いところ、細いところのメリハリが利いていて変化を与えています。シルエットの変化と共に線の変化はその絵の良し悪しを左右する重要な要素です。
・この絵は動きがあって、その動きが上手く行き過ぎてるかもしれません。大抵動きを無理につけると絵がダサくなるのですがこの絵はダサくなってません。むしろちょっとオシャレな感じです。
ルーマニア風のブラウス
この絵は上手いです。
・まず女性の顔が良いです。顔の良さを言葉で説明するのは難しいですが、無駄のない線使いで美しい女性を上手く捉えています。
・ブラウス部が模様的に描かれています。さささっと描かれたような線使いで仕上げてあります。簡単なように見えてシンプルに表現するにはどのような形が良いのか事前に良く考えられています。その際に線がかすれているところやナミナミしたところ、点や格子など変化がとても上手く取り入れられています。
・背景の朱色べた塗り、芸術家は変化を好みます。しかし、背景をべた塗りにして変化をなくしています。多少の色むらをわざと着けていますが、通常なら下塗りをして、タッチをつけたりして背景にも変化を付けるところです。それをわざと強烈な朱色を持って平面的に塗ることで画面にインパクトを与えています。ブラウスの白との対比が素晴らしいです。
・塗り方。ところどころ輪郭線に対しきっちり塗っていないところがあります。下地の白が残っているところです。画家にとって色をきっちりはみ出しないように塗ることは少し集中すれば出来ることです。そこをあえて、きっちり塗りません。「きっちり綺麗に塗らなくてはいけない、綺麗にしなきゃ」などという気持ちが見え見えの絵を描きたくないからです。ダサいからです。「どうです。上手いでしょ」という気持ちが見え見えだとダサいのです。そういう上手いでしょう的な絵を描いている人は早く卒業しましょう。
・この頃描いた絵で『音楽』という絵がありますが、まぁとにかくマティスは独特のオシャレさがあります。ピカソの無骨な表現とはまた違う、女性的なセンスがあります。
青い裸像
青い裸像は切り絵です。
人物を究極にシンプル化した上でこの芸術性の高さ。
・きり絵なので輪郭線に独特のキレがあります。画家はある程度のレベルにいくと、いかにも描きましたという表現を嫌うことがあります。絵の具を塗りたくったようなくどくどしさを感じさせたくないのです。
・この絵は芸術のお手本的な絵と言ってもいいでしょう。シルエットが素晴らしいのです。白と青の対比のみでかつ人体をシンプルに捉えているのです。
・特に注目すべき点は、足の交差具合と胸の捉え方です。
千夜一夜
マティスは晩年切り絵に没頭します。教会の壁やステンドグラス用の絵を作成しています。
晩年の作品は実に素晴らしい作品ばかりです。シルエットにしても色にしても線にしても、、芸術を極めた人生だったと思います。